起業から12年、事業が成長した秘訣は「3つのポイント」の実践
コレカセ仕事百科vol.26に登場するのは、「コレカセ」を主催している株式会社Woo-By.Style(ウッビースタイル)代表取締役の野村美由紀さん。
2008年に起業した野村さんがイベント企画会社の代表として成長を続けられた背景には、3つのポイントがあったそうです。
自分の体験をもとに獲得していったその極意について、お話を伺いました。
コレカセ仕事百科vol.26 野村 美由紀さん
名前 |
野村 美由紀 |
---|---|
事業名・屋号 | 株式会社Woo-By.Style |
肩書 | 代表取締役 |
事業内容 | 企画制作会社 (FESやイベントの企画運営・プロモーション企画・販促企画・コミュニテーの企画制作運営・福利厚生窓口・掲載業請負・ハンドメイド雑貨製造販売) |
事業URL | https://woo-by.co.jp/ |
3方向からの収入になって
一気に事業が回り始めた
独立の理由・きっかけを教えてください
野村美由紀さん
(以下、野村):
代々事業をやっている家に生まれたので、将来は何かしらの事業はしようと思っていたんです。
大学では建築を勉強していて、新卒で就職したのは住宅メーカー。実はヘルメットを被って現場監督をしていたんですよ。
その後、結婚して妊娠したのをきっかけに、子どもとの時間を大切にしながら働ける仕事を自分でつくろうと思い、ウッビースタイルを創業。最初は手作りの布雑貨を扱うハンドメイドショップから始めました。
「稼ぐ事業」のための工夫や意識していることは何ですか?
野村:
3つあります。まずは1つの企画に対して、1つの方向からの売上ではなく、3つ以上の方向からの売上があげられる仕組みにするように意識しています。
私たちの会社が軌道に乗り始めた時、自分たちよりも後から事業を始められたのに、先に辞めていかれる人がたくさんいらしたんです。「なぜなんだろう?」と観察してみたところ、辞めていった方々は、一つの物事で商売を成り立たせようとしていたのではないか、と思うようになって。
具体的にどういうことでしょうか?
野村:
当社を例に挙げると、はじめはショップでスタートして、途中から事業の柱が企画に変わっていきました。それは作家さんからお預りしたものを売る手段を見つける中で、一番効率が良く、さらに思いが込められるものがイベントだったからです。
ただ、イベントは集客しなければならず、場所も備品も借りてスタッフも必要になる。支出が多いのに収入が一方向という薄利多売の事業なので、継続させるのは結構難しいんです。
「これは良くない」と思ったのですが、当社は若干先に事業を始めていたので、少しだけファンの方たちがついていて。だから共同購入のように、他の人とお客さまを共有できないだろうかと考えました。場所代を分けあうと支出は減りますよね。それが2つの方向(お客さま・イベント応援企業)からの収入であり、スポンサー出店の始まりだったんです。
なるほど
野村:
さらにその輪が広がってブースにも集まる人が増え、徐々に規模が大きくなっていきました。
そして500人のお客さまを超えた時に、「自分たちでお金を払って場所を借りる必要はあるのだろうか?」と思ったんです。それで商業施設や住宅展示場などで集客したいと考えている方たちから、「ここでやってください」とご依頼いただけるようにPR活動を行いました。そうすれば、3つの方向(お客さま・イベント応援企業・イベント開催会場)からの収入になりますよね。
これ以来、一気に事業が回り始めるようになり、今はすべてご依頼をいただく形でイベントを行えるようになりました。
素直に解決策を模索し
シェアするためのツールを作る
意識されていることの2つ目は何でしょうか?
野村:
目の前にある課題に素直に解決策を模索し、それを解決できる方法はどんな方法で解決できる人は誰なのかを考え、プロジェクトを組み、そこにストーリーを描くことでムーブメントを意識して企画を作るようにしています。
たとえば新型コロナウイルス感染拡大防止の一環として2020年5月から取り組んでいる、手作りガーゼマスクをお届けするプロジェクト「YOKOHAMAガーゼマスクships」。
突然起こった緊急事態の中で世の中がマスク不足になり、みんなが困るという状況に陥った。だったら単純に「マスクを作ればいい」と考えますよね。でも経営者目線で考えると、ただそれを工場で作るのであれば、あえて私がやる意味はなくて。
事業として成立させるには、どうやったら人に愛される商品や企画、サービスになるかを考え、しっかりストーリー化していくというのが大事になるんです。
「YOKOHAMAガーゼマスクships」はどんなストーリーになったのでしょうか?
野村:
手作りガーゼマスクは、当社が個人事業としてスタートした2008年から一度も途切れることなく作り続けていて、長年のノウハウと実績がありました。
ガーゼマスクでも役に立てるのであればと始めた販売会で1,000枚近くが完売になって。その後も生産を続けていたのですが、供給が追い付かない。すると「制作を手伝いますよ!」と周囲の仲間たちが手を差し伸べてくださったんです。リモートで制作やラッピングを分業で担当していただき、その御礼に、営業自粛によって在庫過多になった横浜の産品を購入してお贈りしたところ、とても喜んでもらえました。
そこで「縫製クルー」「ラッピングクルー」「販売クルー」を募集して、月ごとの納品数によって、ヨコハマ産品登録店の品物をお届けするというフローを作りました。このストーリーは当社ならではのものになったと思います。
3つ目に意識されていることは?
野村:
自分以外の人が、その企画を説明したりシェアできるように、企画書・ウェブページ・プレスリリースなどのツールを作るようにしています。
私が一人で営業するのは限界がありますし、それがムーブメントになることはあまりないと思ってるんです。自分が説明して歩かなくても、他の人、たとえば今このようにインタビュアーの方が私の話を聞いて、インタビュー後に「こういう人がいる」と他の人に話してくれるかもしれないですよね。
でもそうやって自分を紹介してもらうためには、何が必要なのかを常に意識するようにしていて。最低限、何か人に伝えられる道具をいくつか作っておきます。
具体的にはプレスリリースやアーカイブ的に使える文字、動画でもいいと思います。大事なのはそのツールを使って、自分以外の人も説明しやすくすることです。
たとえ状況が変わっても
忘れてはいけないのは「共感」
事業の今後の展望を教えていただけますか?
野村:
当社はフェスをやってる会社なので、対面することで生まれる熱気を利用して、さまざまなことを生み出してきたんです。その高揚感を今回の新型コロナの件ですべて奪われてしまいました。正直、お客さまと自分たちが一体となって共感できるものを作り出す、という熱気に変わるものを見つけるには、相当時間かかると思います。
でも他の皆さんがさまざまな工夫をしてるのを見た時に、忘れてはいけないのはやはり「共感」だと思っていて。さらにプラスアルファとして、楽しさといったエンタメ的なものが必要になるでしょう。なぜなら一般の方たちと楽しむBtoCのイベントは、単純に「楽しい」と感じてもらえる要素がないと振り向いてもらえないんです。
これはWebでも一緒だと思っていて。読者の方が「これ、気になる。読みたい!」と思わないと、クリックすらされないと思うんですよね。共感を呼び、エンタメ要素もある。なおかつ Web でできるものを作っていきたい、と思っています。
取材・執筆/キャベトンコ